[社長ブログ:noteに同記事を掲載しています]
https://note.com/keiko_asimov/n/nae11244e2893
なぜ、私が講義・講演を依頼されるのか、考えてみた。
11月12日(土)とても天気が良く爽やかな晩秋の日に、青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科の講義に行ってまいりました。
本講義は、東京税理士会との連携講座ということで受講生は全て税理士の先生方。
そこで、講義のテーマは『税理士に必要なIT』としました。
青山学院大学大学院での講義スライド
実は、ありがたいことに、最近いろいろなところから講義・講演のご依頼をいただきます。今回の税理士会もそうですが、金融機関、投資機関、東京商工会議所、そして公認会計士協会etc.
確かに現在は、IT企業を経営していますが、元は公認会計士でIT業界よりも会計系の業界の方が長いという少し異色の経歴です。一体、私は何を求められているのだろうか?と考えてみました。
その一つの答えは、私が生粋のIT業界の人間ではないことそのものではないかと考えています。
今、DXの波の中で「デジタルの民主化」が進みつつあります。その流れの中で、私のような業務コンサルタントの立場から、ITを考える視点が求められているのではないかということです。
デジタルの民主化によるリスクを考えてみた。
「デジタルの民主化」という言葉をご存知でしょうか?
定義、解釈は様々ですが、私の解釈としては、「デジタル技術を誰もが活用する社会」のことだと考えています。
DXの波は、大企業だけのものではなく中堅・中小企業においても避けられないものになっています。
DXは、単なるデジタル化ではなく、企業が競争力を維持するために必要な全社的な改革です。つまり、これまでITが苦手としていた人も含めてデジタル化の波にのせる必要があります。これがデジタルの民主化です。
でも、スマホが普及し始めた時のことを思い出してください。誰もが手軽に扱えるテクノロジーを手にした一方で、社会的なリスクを知らない子供達による安易な利用で様々な問題が発生しました。本来、これを教育したり統制したりすべき親世代が十分に仕組みを理解できていかなったためです。
今は、誰もが簡単に使えるデジタルツールが比較的安価に利用できます。そして、「会社に情報システム担当がいなくても活用できます!」また、「情報システム部があったとしても、彼らが忙しいから現場主導で導入しよう!」という謳い文句で、ITベンダーは宣伝し、利便性や操作方法のみを説明します。
でも、利便性だけに着目して大丈夫なのでしょうか?
特に、ASIMOVが業務効率化でお奨めしているRPAは業務を自動で行うツールです。もし、現場に丸投げで活用を進めた場合、無許可のロボットが働くことになり、それは知らないアルバイトが勝手に現場で働いているのと同じリスクとなる可能性があります。
経営者は何を学ぶべきか考えてみた。
デジタルの民主化によるリスクを回避するために、今、経営者にも、ITの知識が必須となりました。もうそれは特殊なものではなく、経営者にとって、組織や人事、マーケティング、会計などの知識が必要なのと同じように、ITについて知識が必要なのです。
下のスライドは、『税理士に必要なIT』の講義の中で、経済産業省の発表した「中堅・中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き」を解説したときのものです。
DXは、ITの話ではなく経営目標からスタートすることが大事だということがおわかりいただけるかと思います。ですので、ツールを買うことがDXではない。それはつまり、情報システム担当任せではダメだということなのです。
『税理士に必要なIT』講義スライドより
でも、忙しい経営者が全ての分野のプロになることはできませんし、その必要もありません。ですので、ITについても「よくわからないから情報システム担当に丸投げ」ではなく、「何を何のために、どのように活用するかに責任を持つために必要な知識を持つ」という意味です。そして、わからないことはわかる人に相談できる体制を構築しておけば良いのです。
『税理士に必要なIT』の講義で伝えたかったこと
青山学院大学大学院の講義は税理士さん向けとのことでしたので、このような、時代の変化を踏まえて、是非とも伝えたいことがありました。
電子帳簿保存法、インボイス制度と中小企業も含めてデジタル化の対応が迫られています。でも、法制度の対応だけでなく、人口の減少は少なくても今後数十年、絶対に止まらないわけで、働き手の減少はもちろん国内市場は確実に縮小していきます。そして、DX推進により、企業の競争力格差は確実に広がっていくでしょう。
つまり、現状維持は確実に後退を意味するのです。
このような変化が激しく先の見えない時代に、顧問先企業の経営者は不安を抱えているはずです。(というか、不安を抱えていないとまずい)
『税理士に必要なIT』講義スライドより
中小企業の経営者にとって、顧問税理士は、頼りになる相談相手です。それは、上のグラフからもわかるように、ITについても例外ではなく、専門家でないことは理解していても、まずは、相談したい相手なのです。
そして、DXには投資が必要です。会社の業務内容を熟知している上に、財務状態も把握している税理士以上に、親身に相談にのることができる相手はいないですよね。
もちろん、税理士はITの専門家になる必要はもちろんありません。
では、税理士の果たす役割とはなんでしょうか。
『税理士に必要なIT』講義スライドより
講義の中では、税理士の先生方に、DXについて興味を持ち理解してもらうために、会計事務所DXの事例を多数お話ししました。
その上で、下記の役割を担っていただきたいとお話しさせていただきました。
①ITの重要性やメリットを理解し、自信の体験として伝える
税理士の先生ご自身が、情報システム担当任せにしたり、会計事務所には関係ないとせず、積極的に活用しようとする姿勢が説得力を持ちます。
②中立な立場から財務状態なども考えてIT投資の提案をする
DXのためのIT導入は、単純にコスト削減だけを目的とするものではありません。費用対効果だけに縛られず、経営戦略的な目線で投資を考えることも重要になってきます。
また、ベンダーはメリットしか言わない場合が多く、経営者とベンダーの間に立って、中立な立場でのアドバイスができるのが税理士の役割です。
③必要なアドバイスをくれる専門家と繋ぐ
税理士は、多くの顧問先を抱えていますし税理士同士のネットワークもあります。その広いネットワークを活かして、適切なアドバイスをくれる信頼できる専門家を日頃から意識して確保しておくことが大事です。
講義の後は、非常に沢山の具体的なご質問をいただき、DXについての関心の高さを実感しました。
日本を元気にするには、中堅・中小企業が元気になること。
それを支える税理士業界のお役に立てればと、微力ではありますが業界の人間として尽力していきたいと考えています。